Journal Club 201911

腫瘍科で行っているJournal Clubの要約を掲載いたします。内容の詳細につきましては原著論文をご参照ください。

2019.11

犬の膀胱腫瘍に対してトセラニブは有効か

Use of toceranib phosphate in the treatment of canine bladder tumors: 37 cases.

Gustafson TL, Biller B. J Am Anim Hosp Assoc. 2019;55(5):243-248.

膀胱の移行上皮癌(TCC)は局所浸潤性の腫瘍であり、従来の化学療法には低~中等度の反応を示す。トセラニブリン酸塩(TOC)は犬のTCC治療においては新しい治療薬である。この研究では、膀胱腫瘍に対してTOCを投与された37頭の犬を調査した。基本的にはTOCは犬に忍容されたが、56%の症例で高窒素血症が生じた。病変の進行までの期間の中央値は96日で、TOC投与を開始してからのMSTの中央値は149日であった。この37頭の間では、腫瘍の進行までの期間や生存期間に影響を与える因子は特定されなかった。この後ろ向き研究は、TOCがTCCの治療に役立つ可能性を示唆している。しかし、膀胱腫瘍においてTOCを投与されている症例に関しては、腎機能の注意深いモニタリングが必要である。

コメント

尿路移行上皮癌に対するトセラニブ治療は、既報の基礎研究の結果により期待されていたところであるが、本論文における臨床使用により、ある程度奏効する可能性があることが分かった。特に、トセラニブ投与前に他の抗がん剤による標準治療が実施済みで、薬剤耐性を持ち始めた進行癌に対しても効果が望める可能性があることが判明し、生存期間の延長に寄与するのではないかと思われた。