Journal Club 202208

腫瘍科で行っているJournal Clubの要約を掲載いたします。内容の詳細につきましては原著論文をご参照ください。

2022.08

イヌの肥満細胞腫に対するイマチニブメシル酸塩の治療法。従来のVinblastineおよびPrednisoneを用いた治療との比較による奏効性および有害事象の評価

Imatinib Mesylate for the Treatment of Canine Mast Cell Tumors: Assessment of the Response and Adverse Events in Comparison with the Conventional Therapy with Vinblastine and Prednisone

Thais Rodrigues Macedo, Genilson Fernandes de Queiroz, Thaís Andrade Costa Casagrande et al. Cells. 2022 Feb; 11(3): 571. doi: 10.3390/cells11030571

肥満細胞腫(MCT)は犬でよく見られる新生物であり、これらの疾患の治療には、手術、多剤併用療法、チロシンキナーゼ阻害剤を用いた標的治療がある。本研究は、犬の皮膚MCTを対象に、VinblastineとPrednisolone(VP)を用いた従来の治療法と比較して、Imatinib mesylate(IM)による治療の反応性と有害事象を評価することを目的としている。24頭のイヌが研究に参加し、13頭がIMで、11頭がVPで治療された。腫瘍組織サンプルは、組織学的診断、グレーディング、およびKIT免疫染色のために提出された。治療に対する反応は、VCOG 基準に従って断層撮影により評価された。有害事象は、VCOG-CTCAEの基準に従って分類された。IM群とVP群には、犬種、性別、年齢、MCTの局在、WHOステージ分類、リンパ節転移のプロファイルが類似している犬がいた。ほとんどの MCT は GradeⅡ/low で、KITパターンⅡとⅢであった。客観的奏効率(ORR)は、IM 群で 30.79%でVP 群の 9.09%と比較して有意に高率であった。有害事象は、IM群ではすべてGradeⅠであり、VP群と有意差があった。結論として、IM群はVP群と比較して良好なORRを示し、有害事象も軽度であるため、低悪性度の犬のMCT治療における適切な選択肢であると考えられた。

コメント

犬のMCT治療において、VinblastineとPrednisoloneのみによる治療と比較すると、Imatinib mesylate(IM)を用いた治療は、安全に治療効果を期待できる治療方法であると考えられる。本研究でのVP群のORRは9.09%とかなり低い印象であるが、代表的な化学療法プロトコルとして挙げられるVP併用療法のORRは47%と報告されている。本研究においてVP群で行われた治療はビンブラスチンとプレドニゾロンのみの投与であり、その他の治療を併用した症例は組み入れられていない。また、プレドニゾロンは漸減して休薬している。過去の研究においてはVP併用療法以外にも放射線治療や別の薬剤が使用されており、単純には比較できないが、少なくともプレドニゾロンを減量しなければVP群のORRが上昇する可能性があるのではないか。