Journal Club 202308
腫瘍科で行っているJournal Clubの要約を掲載いたします。内容の詳細につきましては原著論文をご参照ください。
2023.08
チャーガ茸(Inonotus obliquus)のイヌ膀胱癌オルガノイドに対する抗癌活性
Anti-cancer activity of Chaga mushroom (Inonotus obliquus) against dog bladder cancer organoids
Amira Abugomaa, Mohamed Elbadawy, Yusuke Ishihara et al. Front Pharmacol. 2023; 14: 1159516. Published online 2023 Apr 19. doi: 10.3389/fphar.2023.1159516
化学療法は、その欠点にも関わらず、依然として膀胱癌(BC)の標準治療とされている。薬剤耐性や遠隔転移の原因となるがん幹細胞(CSCs)を標的とする天然サプリメントの開発が必要である。チャーガマッシュルームは、健康増進や抗がん作用があるとして人気がある。オルガノイド培養は、腫瘍の不均一性、上皮環境、元の組織の遺伝的・分子的痕跡を再現することができる。前回の研究では、筋層浸潤性BCオルガノイドの新しい実験モデルとして、イヌ膀胱癌オルガノイド(DBCO)を作製した。そこで本研究では、チャーガマッシュルーム抽出物(チャーガ)のDBCOに対する抗腫瘍効果を検討することを目的とした。本研究では4種類のDBCO株を用いた。チャーガによる処理は、濃度依存的にDBCOの細胞生存率を阻害した。チャーガでDBCOを処理すると、DBCOの細胞周期が有意に停止し、アポトーシスが誘導された。膀胱CSCsマーカーであるCD44、C-MYC、SOX2、YAP1の発現は、チャーガ処理DBCOにおいて低下した。また、チャーガはDBCOにおけるERKのリン酸化を阻害した。ERK、C-MYC、サイクリン(Cyclin-A2、Cyclin-D1、Cyclin-E1、CDK4)の下流シグナルの発現もチャーガによって阻害された。興味深いことに、チャーガと抗がん剤(ビンブラスチン、ミトキサントロン、カルボプラチン)を組み合わせてDBCOを処理すると、活性が増強した。In vivoでは、チャーガ投与により、DBCO由来の異種移植マウスの腫瘍増殖と重量が減少し、壊死病変が誘発された。結論として、チャーガは細胞周期を停止させるだけでなく、増殖関連シグナルと幹細胞の状態を阻害することによって、DBCOの細胞生存率を低下させた。これらのデータを総合すると、チャーガは術後補助化学療法の効果を増強し、その副作用を低下させ、BCの再発と転移を抑制する可能性のある有望な天然サプリメントであることが示唆される。
コメント
チャーガはがん幹細胞を標的としており、チャーガと抗癌剤の併用は、膀胱癌に対する治療成績の向上や抗癌剤の減量、副作用の減少をもたらすかもしれない。実用化のためには、チャーガ自体の副作用や適正投与量を調査する必要がある。