Journal Club 202311
腫瘍科で行っているJournal Clubの要約を掲載いたします。内容の詳細につきましては原著論文をご参照ください。
2023.11
犬の右心房腫瘍に対する強度変調放射線療(IMRT)と化学療法
7匹の犬におけるレトロスペクティブ研究
Intensity-modulated radiotherapy and chemotherapy for canine right atrial tumors: A retrospective study of seven dogs
Steven Moirano, Michelle Turek, Diana Sanchez et al. Vet Radiol Ultrasound. 2023 Oct 6. doi: 10.1111/vru.13303. Online ahead of print.
犬のほとんどの原発性心臓腫瘍は右心房あるいは心基底部に発生し、血管肉腫が最も一般的である。この後ろ向きケースシリーズの目的は、7頭の犬の右心房腫瘍に対する寡分割強度変調放射線療(IMRT)とビンブラスチン、プロプラノロールによる化学療法の治療結果を調査することであった。治療終了後、完全寛解した犬が1頭、部分寛解が4頭、維持病変が2頭であった。すべての犬で心嚢水貯留あるいは胸水貯留が改善した。無増悪生存期間の中央値は290日であった。5頭の犬が転移性疾患で死亡し、1頭の犬は無関係な悪性腫瘍で亡くなり、1頭の犬が生存している。全生存期間の中央値は326日であった。血管肉腫と診断された3頭の犬は244、326、445日生存した。2頭の犬は臨床的に有意だが、致命的ではない不整脈を発症した。計3回の放射線治療を受けた1頭の犬は、剖検時に無症候性心筋線維症と動脈線維症を持っていた。寡分割IMRTと化学療法の併用は忍容性が高く、右心房腫瘍を有する犬に臨床的利益をもたらす可能性がある。
コメント
心臓血管肉腫は予後が悪い腫瘍であり、心嚢水貯留や胸水により一般状態が低下した段階で発見されることから、麻酔が必要な検査、治療が敬遠されやすい。しかし、放射線治療と化学療法により症状をコントロールし、予後を改善できるかもしれない。麻酔リスクは高いが、治療に積極的なご家族には十分な説明の上で推奨したい。