Journal Club 202403

腫瘍科で行っているJournal Clubの要約を掲載いたします。内容の詳細につきましては原著論文をご参照ください。

2024.03

線虫の嗅覚を利用したイヌ・ネコの新たながん検出法

A new detection method for canine and feline cancer using the olfactory system of nematodes

Toshimi Sugimoto, Yozo Okuda, Ayaka Shima et al. Biochem Biophys Rep.2022 Sep 5:32:101332. doi:10.1016/j.bbrep.2022.101332.eCollection 2022 Dec.

N-NOSEは、線虫Caenorhabditis elegansの嗅覚を利用した市販の非侵襲性ヒトがんスクリーニング検査である。線虫は健康な人の尿と比べてがん患者の尿に対して明確な走化性反応を示す。N-NOSEでは、15 種類のヒトのがん (胃癌、結腸直腸癌、肺癌、乳癌、膵臓癌、肝臓癌、前立腺癌、子宮癌、食道癌、胆嚢癌、胆管癌、腎臓癌、膀胱癌、卵巣癌、中咽頭癌) を検出できる。
がんは犬や猫の主な死因であり、効果的な治療と生存率の向上にはがんの早期診断が非常に重要である。ペットのための非侵襲的で正確ながんスクリーニングのための方法が必要とされる。
この研究では、イヌおよびネコの尿サンプルを使用して、がん検出における N-NOSE の有効性を評価した。イヌ (p < 0.01*) とネコ (p < 0.04*) の両方の尿サンプルにおいて、健康な被験者とがん患者の間で線虫の走化性指数に有意な差があることが分かった。ROC(受信者動作特性)分析では、2種類の異なる希釈尿サンプルを使用した場合、AUC(曲線下面積)が犬で0.8114と0.7851、猫で0.7667と0.9000となり、検査の良好なパフォーマンス(精度)が明らかになった。この研究は、N-NOSEが犬と猫の両方において、簡単、正確、低コストのがんスクリーニング検査としての可能性を秘めていることを示唆している。

コメント

N-NOSEのイヌネコにおける臨床研究はこの一報のみで、本研究は症例数が少なく不明確なことも多いと感じた。検査をイヌネコに適用することは可能そうだが、検査精度に関してはまだまだ疑う余地がある。N-NOSEで高リスクとなった紹介症例が来た場合、臨床症状がなければ画像診断(主にCT検査)によるスクリーニング検査を行うことになるが、料金面や検査精度、初期ステージの病変を発見することができるのかなど検査する側としては悩ましい問題がある。
ペットのがん早期診断を行うためのツールとして更に活用出来る様に、症例数を増やした臨床研究が進むことが望まれる。