Journal Club 202405

腫瘍科で行っているJournal Clubの要約を掲載いたします。内容の詳細につきましては原著論文をご参照ください。

2024.05

犬34頭における脊髄髄膜腫および神経鞘腫(2008-2016):病理組織学と治療法に基づく分布および長期転帰

Canine spinal meningiomas and nerve sheath tumors in 34 dogs (2008-2016): Distribution and long-term outcome based upon histopathology and treatment modality

K. Lacassagne, K. Hearon and J. Berg et al. Vet Comp Oncol, 2018 Sep ;16(3):344-351. doi: 10.1111/vco.12385.

本研究の目的は脊髄髄膜腫および神経鞘腫瘍(NST)の手術および/または放射線治療後の臨床転帰を検索することであり、特に各組織病理学的診断について治療後の生存期間および再発までの期間を評価することを目的とした。われわれの仮説は、治療に放射線療法を追加することで、臨床症状の再発までの期間と生存期間が延長するというものであった。34頭の犬が病理組織学的に脊髄髄膜腫またはNSTと診断され組み入れられた。髄膜腫の診断はNSTと比較して有意に長い生存期間と関連しており、生存期間中央値(MST)は508日(95%信頼区間[CI]:66-881) vs 187日(95%CI:76-433;P = 0.02)であった。初回治療として手術単独またはSRT単独を行った後、再発に対して定位放射線治療(SRT)を行った犬(7頭)では、さらに125~346日の生存期間が延長した。

コメント

病理結果によって予後に大きな差があった。硬膜外病変のため術前の生検は困難であり、画像診断、発生部位、患者情報などから仮診断するしかない。術後病理結果によって予後が説明されるため、初期治療としての外科切除または診断目的の切除生検は妥当と考えられる。一方、治療法による生存期間の比較では、各群のN数が少なく、正確な比較はできなかった。術直後の放射線療法や初期治療としてのSRTの利益も、現時点では不明である。しかし、神経鞘腫の再発病変に対してSRTを実施した症例では、125-346日の生存がさらに得られたことから、再発症例に対しての放射線治療は考慮すべきかもしれない。