Journal Club 202407

腫瘍科で行っているJournal Clubの要約を掲載いたします。内容の詳細につきましては原著論文をご参照ください。

2024.07

ATRはテロメラーゼがDNA切断をテロメアに変換するのを阻害する

ATR blocks telomerase from converting DNA breaks into telomeres

Charles G. Kinzig , George Zakusilo , Kaori K. Takai et al. Science, 2024 ; Vol 383, Issue 6684 : 763-770 . DOI: 10.1126/science.adg3224

テロメラーゼは自然な染色体末端のテロメアを維持する酵素であるが、ネオテロメアの形成が末端切断の原因となる二本鎖切断(DSB)では抑制されるはずである。われわれはヒト細胞において、Cas9あるいはI-SceIによって誘導されたDSBにおけるネオテロメア形成を検出するアッセイ法を開発した。テロメラーゼはDSBにテロメリックリピートを付加し、間質性テロメリックリピートの挿入、あるいは末端欠失を伴う機能的ネオテロメアの形成をもたらした。テロメラーゼがゲノムの完全性にもたらす脅威は、切除されたDSBでのテロメラーゼを阻害するATR(ataxia telangiectasia and Rad3-related)キナーゼシグナルによって最小化された。切除されたDSBでの作用に加えて、テロメラーゼはCas9酵素産物複合体中の押し出された鎖をネオテロメア形成のためのプライマーとして利用した。我々は、ネオテロメアの形成は正常ヒト細胞では有害であるが、がん細胞が切断-融合-橋渡しサイクルから逃れることを可能にするかもしれないと提唱している。

コメント

一つの疑問に対してさまざまな角度から検証していくところが大変興味深い。ネオテロメアについてまだ解明されていないことが多いが、それらが明らかになり癌治療に活用されることを期待する。