Journal Club 202408
腫瘍科で行っているJournal Clubの要約を掲載いたします。内容の詳細につきましては原著論文をご参照ください。
2024.08
肥満細胞腫の黄体形成ホルモン受容体(LHR)の発現は去勢・避妊犬で増加する
Luteinizing Hormone Receptor Expression in Neoplastic Mast Cells Is Increased in Spayed and Neutered Dogs
Michelle Anne Kutzler, Valerio Moccia, Khawla Zwida et al., J Am Anim Hosp Assoc. 2022 Nov ;58(6):271-276. doi: 10.5326/JAAHA-MS-715
性腺摘出手術により肥満細胞腫(MCT)の発生リスクは増加することが報告されている。性腺摘出手術は血中の黄体形成ホルモン(LH)の濃度を非常に高くするが、持続的なLH上昇の影響によりLH受容体は非生殖器の正常組織やリンパ腫、血管肉腫、副腎皮質腫瘍で報告されている。本研究では、犬のMCTにおいて黄体形成ホルモン受容体(LHR)が発現しているのかどうか、また性腺摘出手術は肥満細胞においてLHRの発現を増加させるのではないかという仮説を立て、それを検証した。実験には避妊済みのメス5頭と未避妊3頭未去勢3頭の計11頭を用いた。LHR陽性細胞の割合は、未避妊未去勢の犬で64.3%に対し、避妊済みの犬では84.2%であった。このことから性腺摘出手術をした犬の肥満細胞にLHRの発現が有意に増加していることが分かった。しかし、本研究ではLHによりLHRが活性化されることによって肥満細胞に与える影響は不明なままである。
コメント
性腺摘出手術がMCTの発生リスクを増加させる作用は不明な点が多く、LHRの増加が関連しているのかもまだ未解明である。今後MCTにおけるLHRの発現増加作用が解明されれば、MCT治療としてLHR発現の抑制が有用という研究の裏付けとなるかもしれない。