Journal Club 202411

腫瘍科で行っているJournal Clubの要約を掲載いたします。内容の詳細につきましては原著論文をご参照ください。

2024.11

肥満細胞腫瘍の犬のチジラノール・チグレートに対する反応

Response to tigilanol tiglate in dogs with mast cell tumors

Margaret L. Musser, Pamela D. Jones, Teresa L. Goodson et al. J Vet Intern Med. 2024 Oct 17. doi: 10.1111/jvim.17211.

背景:犬の肥満細胞腫瘍に対するチジラノール・チグレートに対する奏功率に関する情報は限られている
目的:肥満細胞腫の犬におけるチジラノール・チグレート腫瘍内投与の奏功率と忍容性を報告すること
症例:149頭の犬、151の腫瘍
方法:多施設レトロスペクティブ研究。米国獣医内科学会(ACVIM)の腫瘍学に登録した獣医師によりチジラノール・チグレートで治療された犬の情報を調査した。初回の治療時、治療後1か月および1年の情報を収集した。
結果:ほとんどの腫瘍は皮膚腫瘍であり、四肢に発生し、細胞学的に低悪性度であった。治療から1か月後、チジラノール・チグレートを1回投与した犬の75%が完全寛解となった。この反応はデータが入手可能な犬の64%で1年間持続した(n = 88)。創傷形成は中央値7日(1-91日)後に発生し、創傷面積の中央値は4.71 cm2(0.09-100 cm2)であった。傷が完全に治るのに30日(14-154日)を要した。腫瘍体積と創傷サイズの間に中程度の関連性が確認された。
結論と臨床的重要性:チジラノール・チグレートは、犬の肥満細胞腫瘍に対する効果的な局所治療オプションである。独特な臨床経過を辿るため、局所治療にチジラノール・チグレートを選択する前には、クライアントへの説明及び慎重な症例選択が必要となる。

コメント

厳密に症例を選択した研究と比較するとやや効果が落ちているが、奏功率は高く、治療効果が期待できる。臨床現場では現在適応とされている条件を満たさない症例にも使用を検討する可能性があるが、オーナー様への十分な説明の上で治療を開始すべき。扁平上皮癌や肉腫への効果も調査されており、今後他の腫瘍に対しても使用できるかもしれない。