業績 2022年度
岐阜大学動物病院腫瘍科では、日々、がんの動物に対するよりよい診断や治療方法を求めて、様々な臨床研究や症例報告、また医学部等との共同研究も積極的に行っています。下記にその一例をご紹介します。
論文
- Sho Goto, Fumikazu Muto, Ryota Iwasaki, Takashi Mori. Successful rescue treatment using chlorambucil for presumed recurrence of sinonasal lymphoma in a cat. JFMS Open Rep. 2023 Jan-Jun; 9(1): 20551169231157325. Published online 2023 Mar 29. doi: 10.1177/20551169231157325
- Ryutaro Yoshikawa, Fumitaka Yoshikawa, Sho Goto, Ryota Iwasaki, Takashi Mori. Computed tomography-based evaluation for normal adrenal gland size independent of body weight in dogs. Open Veterinary Journal, (2023), Vol. 13(2): 218–224. DOI:10.5455/OVJ.2023.v13.i2.10
犬の正常な副腎の大きさは体重によってばらつきがあり、標準的な体格ではない犬や超大型犬または超小型犬では副腎が腫大しているかどうかの判断に悩むことがしばしばありました。この研究では、体重や体格に関係なく、一律に副腎腫大の判断ができるような新しい計測方法を樹立しました。副腎の短径を第4腰椎レベルの脊髄腔の高さで割り、上限値(右副腎: 1.3、左副腎: 1.4)を超える症例では副腎が腫大していることがわかりました。
- Sho Goto, Ryota Iwasaki, Hiroki Sakai, Takashi Mori. Combined Hypofractionated Radiotherapy and Chemotherapy Versus Hypofractionated Radiotherapy Alone for Cats with Localized Sinonasal Lymphoma. J Am Anim Hosp Assoc. 2022 Sep 1;58(5):254-261. doi: 10.5326/JAAHA-MS-7267.
- Atsushi Maeda, Sho Goto, Ryota Iwasaki, Koji Yamada, Mami Murakami, Hiroki Sakai, Takashi Mori. Outcome of Localized Bile Duct Carcinoma in Six Dogs Treated with Liver Lobectomy. J Am Anim Hosp Assoc. 2022 Jul 1;58(4):189-193. doi: 10.5326/JAAHA-MS-7199.
- Yuji Fujii, Akihiro Uno, Shinichi Takitani, Ryota Iwasaki, Ryutaro Yoshikawa, Misuzu Okajima, Yasushi Makino, Naoto Ito, Takashi Mori. A frameshift variant in the EXT1 gene in a feline leukemia virus-negative cat with osteochondromatosis. Anim Genet. 2022;53(5):696-699. doi: 10.1111/age.13232.
- R. Yoshikawa, A. Maeda, Y. Ueno, H. Sakai, S. Kimura, T. Sawadaishi, S. Kohgo, K. Yamada, T. Mori. Intraperitoneal administration of synthetic microRNA-214 elicits tumor suppression in an intraperitoneal dissemination mouse model of canine hemangiosarcoma. Vet Res Commun. 2022 Jun;46(2):447-457. doi: 10.1007/s11259-021-09869-1.
犬の血管肉腫は非常に予後が悪く、新規治療方法の開発が急務とされています。この研究ではマイクロRNAという極めて小さな分子に着目し、新規治療方法となる可能性について検証しました。マイクロRNA-214(miR-214)は犬の血管肉腫細胞に対して抗がん活性を示すマイクロRNAであり、この塩基配列を人工的に改変することで生体内投与を可能にした化学修飾miR-214を犬血管肉腫の腹腔内播種モデルマウスへ腹腔内投与することで抗腫瘍効果が得られました。化学修飾miR-214が犬血管肉腫の新規治療方法となる可能性を示した初めての報告です。
- Y. Murakoshi, R. Yoshikawa, T. Mori, R. Iwasaki. Feasibility study for inducing the skeletal muscle fibrosis via irradiation using two mouse strains. Jpn J Radiol. 2022 May;40(5):466-475. doi: 10.1007/s11604-021-01219-0
学会発表・講演
- 吉川竜太郎, 井上 純, 岩﨑遼太, 寺内光彦, 藤井祐至, 太田茉耶, 長谷川知美, 水野 累, 森 崇, 稲澤譲治. 犬悪性黒色腫に対する microRNA-634 核酸抗がん薬の開発に向けた予備的検討. 第19回獣医内科学アカデミー学術大会(東京&online)
- 長谷川知美, 吉川竜太郎, 寺内光彦, 太田茉耶, 宇野晶洋, 大岩修治, 梁瀬将豪, 岩﨑遼太, 森 崇. 大量出血が予想される待機手術における全血冷蔵保存による貯血式自己血輸血の安全性. 第19回獣医内科学アカデミー学術大会(東京&online)
- 太田茉耶, 吉川竜太郎, 岩﨑遼太, 森 崇. 犬の歯肉に発生した扁平上皮癌に対する加速分割照射の有効性と有害事象の検討. 第19回獣医内科学アカデミー学術大会(東京&online)
臨床研究アワード受賞おめでとうございます - 鈴木統子, 吉川竜太郎, 岩崎遼太, 森 崇. 犬の肝細胞癌の腫瘍随伴性低血糖に対する放射線治療の有用性の検討. 第19回獣医内科学アカデミー学術大会(東京&online)
- 岩﨑遼太. 日本が牽引するBNCTの魅力と動向. 第35回獣医放射線教育研究会
- 平島一輝、吉川竜太郎、赤尾幸博、酒井洋樹、森崇. 血管肉腫・骨肉腫に対するヒト-イヌ相同性を利用したマイクロRNA医薬・バイオマーカー開発. 第81回日本癌学会
- 岩﨑遼太、吉川竜太郎、森崇、松川岳久、武野慧、鈴木実、小野公二. ホウ素中性子捕捉療法(BNCT)がマウス正常骨に与える生物学的影響. 日本放射線腫瘍学会第59回生物部会学術大会
書籍・商業誌・その他
- 第3回 イオンペット中部支社岐阜大学合同症例検討会
- 長谷川知美.猫の口腔内扁平上皮癌について
- 藤井 祐至、古澤 慶一. 免疫抑制剤の併用が許容されなかった難治性免疫介在性血小板減少症の犬の1例
- 寺内 光彦. 犬の肝臓腫瘍〜肝臓腫瘍の外科療法〜
- 宇野 晶洋:対側への腎転移を伴う腎細胞癌に対して放射線治療およびトセラニブの投与を実施した犬の1例. 小動物腫瘍臨床 Joncol No.32
- 藤井 祐至、伊藤 直人:One Healthを考える 重症熱性血小板減少症候群(SFTS)について. 岐阜県獣医師会報. 2022;63(1);2-6
- 第2回 イオンペット中部支社岐阜大学合同症例検討会
- 太田茉耶.犬の口腔内扁平上皮癌について.
- 長谷川知美.StageⅣの鼻腔腺癌に対して複数回の放射線治療を実施し、長期生存が得られた猫の1例.
- 宇野晶洋.一次診療施設でみる犬の肝臓腫瘍 〜超音波検査+細胞診で分かること・分からないこと〜
- 岩﨑遼太:症例報告 CTリンパグラフィーによりセンチネルリンパ節を同定した口腔内悪性メラノーマの犬の1例.伴侶動物画像診断 No. 34, 2022.