業績 2023年度

論文

  1. Ryutaro Yoshikawa, Jun Inoue, Ryota Iwasaki, Mitsuhiko Terauchi, Yuji Fujii, Maya Ohta, Tomomi Hasegawa, Rui Mizuno, Takashi Mori, Johji Inazawa. Therapeutic applications of local injection of hsa-miR-634 into canine spontaneous malignant melanoma tumors. Cancer Gene Ther. 2023 Aug 8. doi: 10.1038/s41417-023-00656-5. Online ahead of print.
    人と犬の悪性黒色腫は極めて予後の悪いがんであり、有効な治療法の開発が求められています。両種間で腫瘍生物学的な性質が似ていることから、犬を対象とした研究成果は、人への臨床応用にもつながることが期待できます。ヒトがん抑制型マイクロRNA(miRNA)の1種であるマイクロRNA-634(miR-634)は、犬悪性黒色腫細胞へ導入することにより、ヒト標的遺伝子のオルソログである犬の標的遺伝子の発現抑制を介して、顕著に細胞死を誘導することを見出しました。さらに、犬に自然発症した悪性黒色腫に対する合成miR-634の腫瘍内局所投与による臨床試験において、7症例中4症例で抗腫瘍効果が認められ、最大652日間にわたる長期的なmiR-634の投与においても、明らかな有害事象は認められませんでした。これらの結果は、合成miR-634を用いた核酸抗がん薬は、犬の悪性黒色腫に対する新たな治療モダリティとなる可能性を示唆しています。将来的に、転移病巣を標的とした全身投与用の合成miR-634核酸抗がん薬の開発につながることが期待されます。
  2. Ryota Iwasaki, Ryutaro Yoshikawa, Ryo Umeno, Azusa Seki, Takehisa Matsukawa, Satoshi Takeno, Kazuhito Yokoyama, Takashi Mori, Minoru Suzuki and Koji Ono. The effects of BPA-BNCT on normal bone: determination of the CBE value in mice. J Radiat Res. 2023 Jul 29;rrad054. doi: 10.1093/jrr/rrad054. Online ahead of print.
    正常な骨にエックス線が照射されると、副作用として骨が脆弱になることが問題となります。ホウ素中性子捕捉療法(BNCT)は、腫瘍に取り込まれやすいホウ素薬剤を投与した後に中性子線を照射し、ホウ素と中性子との核反応によって生じる極短飛程の粒子が腫瘍細胞を攻撃する画期的な放射線治療です。本研究では、正常な骨組織のどこに、どれくらいホウ素が取り込まれ、BNCTによってどの程度骨が脆弱になるかについて、マウスを用いてエックス線と比較解析をしました。BNCTは正常組織への影響が少ないと考えられていますが、今後の適応拡大を目指す上では必ず考えなければならず、人医療にも獣医療にも有用な研究となりました。
  3. Mitsuhiko Terauchi, Yuji Fujii, Sho Goto, Ryota Iwasaki, Ryutaro Yoshikawa and Takashi Mori. Efficacy and adverse events of anthracycline and propranolol combination in five dogs with stage 3 hemangiosarcoma. Open Vet J. 2023; 13(6): 801-806. doi: 10.5455/OVJ.2023.v13.i6.15
    犬の血管肉腫(HSA)は予後が悪く、特に進行した HSA(Stage 3 HSA)の犬に対する信頼できる治療法はまだ確立されていません。近年βアドレナリン受容体拮抗薬であるプロプラノロールが、血管内皮細胞に由来する腫瘍に対して抗腫瘍効果を示すことが、いくつかの研究で証明されています。本研究は、Stage 3 HSAの犬に対しアントラサイクリン系抗がん剤とプロプラノロール併用療法の臨床的有効性と有害事象を評価した初めての報告です。
  4. Wakana Yoneji, Kyoko Yoshizaki, Teruaki Hirota, Kensuke Yoneji, Ryutaro Yoshikawa, Takashi Mori, Hiroki Sakai and Akihiro Hirata. First Evidence of Familial Transmission of Hereditary Gastrointestinal Polyposis Associated with Germline APC Variant in Jack Russell Terriers. Vet. Sci. 2023, 10(7), 439; doi.org/10.3390/vetsci10070439
    ジャックラッセルテリア(JRT)の消化管ポリポーシスは、近年発見されたadenomatous polyposis coli遺伝子(APC遺伝子)変異によって引き起こされる疾患です。この疾患は遺伝性疾患である可能性が疑われていましたが、これまでにそれを証明した研究は存在しません。本研究では、血縁関係のあるJRT家庭内においてAPC遺伝子変異と関連した消化管ポリポーシスの家族内伝播が起こることを発見しました。

学会発表・講演

  1. 岩﨑遼太, 後藤 匠,吉川竜太郎,森 崇. 犬口腔内悪性メラノーマにおける領域リンパ節切除に対する予後比較解析. 第107回獣医麻酔外科学会学術集会
  2. 米地 若菜, 吉嵜 響子, 廣田 照了, 米地 謙介, 吉川 竜太郎, 森 崇, 酒井 洋樹, 平田 暁大. 新たな遺伝性疾患である「ジャックラッセルテリアの遺伝性消化管ポリポーシス」の家系内伝播の証明. 第166回日本獣医学会学術集会 2023年9月

学会発表(ポスター発表)*

  1. Mitsuhiko Terauchi, Ryota Iwasaki, Yuji Fujii, Takashi Mori
    犬の肛門嚢アポクリン腺癌に対する3D-CRTを用いた10×4Gyでの新規線量漸増プロトコルの有用性の評価
    :8×3.8Gyの従来プロトコルとの比較研究Evaluation of the utility of a novel high-dose radiotherapy protocol of 10 × 4 Gy using 3D-CRT for canine apocrine gland anal sac adenocarcinoma:
    A comparative study with the conventional protocol of 8 × 3.8 Gy

    World Veterinary Cancer Congress Tokyo 2024
  2. Ryutaro Yoshikawa, Ryota Iwasaki, Mayu Kumazaki, Hiroki Sakai, Takashi Mori
    犬のリンパ節転移を伴う肛門周囲腺癌に対する放射線治療の効果:6頭の犬の回顧的研究
    Impact of radiation therapy on canine perianal gland adenocarcinoma with lymph node metastasis: A retrospective study of six dogs

    World Veterinary Cancer Congress Tokyo 2024
  3. Akihiro Uno, Ryota Iwasaki, Takashi Mori
    7症例における犬の眼窩髄膜腫の治療成績
    Treatment outcomes of canine orbital meningiomas in seven cases

    World Veterinary Cancer Congress Tokyo 2024

学会発表(口頭発表)*

  1. Daisuke Yonetomi, Takeshi Hara, Takashi Mori
    犬の限局性肝領域におけるハイスループットガドキセト酸ナトリウム造影MRIの評価
    Evaluation of high through-put gadoxetic acid-enhanced magnetic resonance imaging for canine focal liver lesions

    World Veterinary Cancer Congress Tokyo 2024

*2024年3月21〜24日に東京にて開催された世界獣医がん学会(WVCC2024)に参加しました。岐阜大学腫瘍科からは3名がポスター発表、1名が口頭発表を行いました。