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日時 | 2007年7月26日(木)21時~23時 | |
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会場 | 岐阜大学応用生物科学部1階 ・ 第101講義室 | |
講演内容 | 教育講演 | 止血機能検査を正しく理解し、診療にもっと活用しよう! ---よくある間違いとその解決法ならびに新しい検査法の提案 |
症例検討【1】 | ネコの原発性高アルドステロン症の一例 | |
症例検討【2】 | 腰椎および腸骨下リンパ節に転移した悪性毛包上皮腫のイヌの一例 |
講師 鬼頭 克也(内科・獣医寄生虫病学 教授)
血液凝固時間を測定したが、結果をどのように考えたらいいのか分からない、との相談をよく受けます。
出血傾向や血栓症に関する講演会活動によって止血機能をルーチンに検査すべきであるとの理解が深まったこと、簡便で安価なドライ式血液凝固分析装置が誕生したことから、止血機能検査は動物医療の現場に急速に普及しています。しかし、検査方法に関する理解が十分でないことから、検査結果を診断や治療に活用できていないケースが見受けられます。このため、臨床医からは、「凝固検査をやっぱり止めてしまった」との言葉さえ耳にします。
このような問題を解決するために、今回は、血液凝固検査を実施する上で間違いやすいポイントに焦点をあて、解説したいと思います。また、当研究室で検討している新たな止血機能検査法を紹介するとともに、この地区の先生方と診断法の確立に向けた共同作業を提案したいと思います。
講師 西飯 直仁(岐阜大学大学院連合獣医学研究科)
10歳、雌、避妊済みの雑種猫が突然の運動失調、眼振、頸部捻転および全身の疼痛を主訴に来院した。血液生化学検査では低K血症、高CPK血症がみられた。レントゲン検査、副腎を含む超音波検査では著変はみられなかった。静脈内輸液によるKの補正、プレドニゾロン、ジアゼパムの投与により運動失調および全身の疼痛は改善された。頭部CT検査および髄液検査では異常はみられなかった。血漿fT4濃度、尿検査は正常であった。アルドステロンの過剰による腎臓からのK喪失を疑い、血漿アルドステロン濃度はラジオイムノアッセイにより、また血漿レニン活性測定はELISAにより測定した。正常ネコと比較して、血漿アルドステロン濃度は増加しており、血漿レニン活性は低下していた。以上より原発性高アルドステロン症と診断した。120病日現在、症状は落ち着いているが低カリウム血症は存在しており、今後K製剤の経口投与およびスピロノラクトンの投与を検討している。
講師 森 崇(腫瘍科・獣医分子病態学 准教授)
毛包上皮腫は通常毛包由来の良性の腫瘍であり、転移がみられることは極めてまれであるとされている。今回、腫瘍の初発から約3年で腰椎と腸骨下リンパ節に転移を認め、放射線治療にて比較的良好なQOLを維持できている症例についてその概要を報告する。悪性毛包上皮腫はほとんど報告がなく、その転移や治療に対する反応などははっきりわかっていないが、昨年2症例ほど国内の学会にて症例報告発表されたので、それらの報告と併せて考察したい。