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日時 | 2011年1月30日(日) 14時30分~17時 | |
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会場 | 岐阜大学応用生物科学部1階 多目的セミナー室(旧101講義室) | |
講演内容 | 教育講演 | 臨床データに基づいた貧血に対する今日的アプローチ |
症例検討【1】 | 診断に苦慮した犬の血液疾患の3例 | |
症例検討【2】 | クッシング症候群と低血糖を併発した肝細胞癌に対して放射線治療を行った犬の1例 | |
協賛企業 | 日本光電株式会社、株式会社インターズー |
講師 鬼頭 克也(内科)
貧血は血液疾患のなかで最も頻繁にみられるごくありふれた病態です。しかし、背景となる基礎疾患が多く、その病態発生が正しく理解されていないことから、的確に診断、治療されていない例をしばしば経験します。貧血に遭遇したとき、「鉄剤を投与すれば」、「エリスロポエチンを投与すれば」でよいのでしょうか。このセミナーでは、2008年と2009年に岐阜大学動物病院内科に貧血の診断と治療を依頼された犬の症例をretrospectiveに解析し、造血や鉄動態にかかわる臨床データに基づき、かつ最新情報も加えて、貧血の病態生理に即した今日的な臨床アプローチを解説します。
講師 古橋 秀成(ふるはし動物病院 院長)
症例1:シーズー、12歳、雌、前肢の跛行で来院。脾腫、肝腫、体表リンパ節の腫脹が見られた。摘脾、肝臓と体表リンパ節のバイオプシーを実施しリンパ腫との診断を得た。その後白血球が減少(3900/μl)しLアスパラキナーゼーを投与したが、異形成を示す好中球が末梢血に見られたため骨髄検査をおこなった。診断結果は骨髄異形成症候群であった。
症例2:ウェルシュコギー、12歳、雌、発熱、呼吸促拍で来院。血液検査で白血球の増加(88400/μl)とCRP14mg/dl、フィラリア陽性、胸部X線で肺野の不透過性亢進が見られた。感染症を除外診断するため抗生剤などの対症療法を行ったが白血球数は依然高いため骨髄検査をおこなった。診断結果は慢性骨髄性白血病であった。
症例3:ポメラニアン、8歳、雄、咳と発熱と元気消失で来院。全身に点状出血が見られ、血液検査で白血球の減少(1200/μl)、血小板の減少(15000/μl)、CRP20mg/dl以上、犬パルボウィルス陰性であった。その後貧血も見られたため骨髄検査を行った。診断結果は再生不良性貧血であった。
3例とも赤血球、白血球、血小板に異常をきたし対症療法には全く反応せず臨床経過も切迫していた。末梢血の診断では確定に至らないため3例とも骨髄検査が必要であった。
講師 高橋 舞子(腫瘍科)
犬における肝細胞癌は嗜眠、虚弱、食欲不振、多飲多尿、嘔吐などが一般的な症状であり、腫瘍が非常に大きい場合は腫瘍随伴症候群として低血糖がみられ発作を生じることがある。今回我々は、多飲多尿および血液検査で肝・胆道系酵素の上昇を主訴に来院し、低血糖とコルチゾール値の上昇を認めた孤立性腫瘤型肝細胞癌の犬に遭遇した。肝細胞癌の治療の第一選択は外科的肝葉切除であるが本症例は全身状態の悪化から初期は外科手術が困難であったため、メガボルテージ放射線を用いて放射線治療を実施した。放射線治療により腫瘤の明らかな縮小が認められ、それに伴い低血糖とコルチゾール値の改善が認められたため、これらは腫瘍随伴症候群であると判明した。本症例は腫瘍の外科的摘出を行い経過観察中である。低血糖およびクッシング症候群を併発した犬の肝細胞癌についての報告、また犬の肝細胞癌に対して放射線治療を実施した報告はないため、本症例について検討したい。
14時30分より、セミナーにご協賛いただいた日本光電株式会社様より、「動物用全自動血球計数器の測定原理と注意点」とのタイトルでご講演があります。
株式会社インターズー様のご協力により、教育講演の内容を、J-VET誌2010年12月号 58~64ページに掲載しています。今後も、教育講演の要旨がJ-VET誌に、事前(1ヶ月前)に掲載されます。