人の緩和ケアについて、WHOは次のように定義しています。『緩和ケアとは、生命を脅かす疾患による問題に直面している患者とその家族に対して、痛みやその他の身体的問題、心理社会的問題、スピリチュアルな問題を早期に発見し、的確なアセスメントと対処(治療・処置)を行うことによって、 苦しみを予防し、和らげることで、クオリティ・オブ・ライフを改善するアプローチである』。つまり、患者様やご家族が、疾患に伴うさまざまなつらさを和らげ生活やその人らしさを大切にするという考え方です。
緩和ケアは末期医療のイメージがあります。しかしこれは大きな誤解であり、病気の進行度に関係なく診断時、もしくは治療の初期から基本的な緩和ケアを受けることが可能です。対象となる基礎疾患には、がん疾患、心臓病、腎臓病、呼吸器疾患、神経疾患、認知機能障害(認知症)、難治性外傷(褥瘡含む)など、様々な疾患が含まれます。人では転移を伴う肺がん患者において、早期からの緩和ケア実施によって生存期間を延ばす可能性があることが示されました(Temelら.2010)。積極的な治療が困難な動物たちはもちろん、闘病中の動物たちに対しても苦痛を少しでも和らげる治療をご提案しています。他科あるいは一次病院との連携も可能です。
また、多くの疾患は患者だけでなく、家族にも大きな負担を与えます。緩和ケアは患者(動物)本人だけでなく、そのご家族(飼主)も対象となります。
疾患に伴う苦痛や、抗がん剤や放射線治療など、積極的な治療を選択した場合の副作用をやわらげる処置を行います。なるべくご家族や動物の事情に合わせた方法をご提案するために、カウンセリングのお時間をいただくことがあります。
麻酔科と連携した疼痛管理、褥瘡のケア、認知症のケアに特に力を入れています。
当科ではオゾン療法を実施しています。オゾン(O3)はその強い酸化力により直接的に脱色、脱臭、消毒、殺菌効果を示すほか、毒性を示さない低濃度域では生体成分との反応生成物が生体に有益な作用をもたらします。
その他、身体に負担の少ないサプリメントや食餌のご提案をさせていただきます。
闘病中の動物を介護するご家族には大きなストレスがかかります。飼主様の抱える不安や疑問に対するカウンセリングや、一時的にお預かりして介護を代替するデイサービスを行っています。ご相談の際はカウンセラーの資格をもった獣医師が対応させていただきます。